家出ファミリーを読みました。
もしも、自分の夫の仕事がうまくいかなくなり、仕事をしなくなり、その上、暴力があり、夫の親戚からも受け入れてもられず、働いても、働いても生活は貧しい。
もし私がそんな状況になれば、この小説の中の母親と同じような精神状態になってしまう可能性はあるよ。そう心から思いました。
家出ファミリー [ 田村真菜 ]
私が貧乏な国の貯金も仕事もない留学生と学生結婚すると決めた時に、親、親戚だけでなく多くの人に反対されました。
「子どもが生まれたら一生差別される」
「飢えたらどうするの?」
そんなことたくさん言われました。
でも、まぁ、その時は若いし「そんなん、なんとかなるだろう」って思ったのです。
でも、それって単に運が良かっただけかな、と今では思います。
もちろん努力もしました。でも努力をしている人は山ほどいます。
この小説の母親だって私以上に努力してる。
家出ファミリーは、自伝的ノンフィクション小説なのだそうです。
もしもそこの子どもとして自分が生まれていたら、どうなっていたのだろう。
主人公のように賢くないので、もがいて、もがいてそれでもうまくいかない世界に住んでいただろう。
あり得ること。
だから、どう感想を書けば良いのか本当に戸惑いました。それは、どの登場人物にも自分が、なりうると心底思えるからです。
作者の 田村真菜さんのインタビューは検索してもらったらたくさん見つかります。淡々とそして凛としています。壁をはい上がり超えた人だけが持つ潔さ、があります。
ただ、あまりの文章の凄さや、彼女の経験が違いすぎて、どう語ろうと、どうわかろうとしても、路上で寝た経験を持たない自分のどういう解釈も、ある意味薄っぺらいんだと思ってしまいます。
この本をベッドサイドの横に置いていたら、中学生の娘が読み始めていました。
表紙が漫画ぽかったからかもしれないです。彼女は、最近は漫画しか読まないのでびっくりして
「読んだ?」
と聞いたら娘は
「うん」と答えました。でも、そのまま何も言わないので
「どうだった?」と聞くと
「何が?」と無表情で言います。
「感想だよ」
「う〜ん。誰も死ななくてよかった」
それだけ。そのあと娘は、何も言いませんでした。
その日の夜に、娘は突然、私と夫を代わる代わる、ぎゅっ、とハグして一言
「だいすき」
と言ってから自分の部屋に入っていきました。
彼女は何も言わなかったけれど、私は自分の(たまたま)に感謝したように、思春期の娘は、(あたりまえ)と思っていた日常に感謝したんだろうな、と思いました。
たぶん、そういうことも含めて色々と気がつかせてくれるような小説でした。
夏休みに親子で読むのにいいかもしれない、と思います。