今年の娘の目標は幼稚園に遅刻しない、こと。
自分で目覚まし時計を毎晩かける。
『もうすぐ小学生なので、ちゃんとしないといけない』と言う。(なぜか彼女はもうすぐ小学生になる気でいる。まだ2年あるんですけど。。笑)
でも、その意気込みのおかげで、今のところ無遅刻。
昨日朝、ランチ用の野菜ジュースを一人で買いたいと言い出した。私は店の中に入っちゃダメならしい。
外で待ってたら、ちゃんと品物を渡して、『これください』と言い、おつりもらって、『ありがとうございました』
と言い、誇らしげに出てきた。
130円にぎり締めてのはじめてのおつかいだ。
ものすごく自慢そうな顔。
5歳はなにもかもが、新鮮な年頃なんだなぁ、と思う
その時に、ふいに松葉杖のおばあさんが沢山買いもの袋を持って出てきました。外は雨。
でも手がふさがっていて傘がさせない。
私は、とっさに傘を後ろからさしてあげました。
おばあさんはちょっとびっくりしたように顔をあげ、
それから『大丈夫です、大丈夫です』と2回いいました。
私も、『大丈夫ですよ』と同じことを言いました。
どこら辺に住んでいらっしゃるのかもわかりませんでしたが、とにかく傘をさしておばあさんが進む方向に歩きはじめたのです。
東京の渋谷地区なので私みたいなおせっかいはあんまりいないらしく、おばあさん戸惑いながら言います。
『少しくらい濡れても大丈夫ですから』
私も笑顔で
『大丈夫ですよ』と繰り返す。
後から、ついて来た娘が
『いこうよー。遅れちゃうよぉー』と私に向かって叫びます。
それを聞いた、おばあさんは
『なれてますから』
もう一度、私に悪そうに言いました。
私は、娘の耳のそばでささやきました。『傘さしてあげないと風邪ひいちゃうでしょ』
『でも、遅刻しちゃう』と娘は少しだけ泣きそうになり小さい声で返します。
私は娘を無視して、おばあさんを家に送りとどけてあげました。
娘はとぼとぼと後をついてきました。
回り道して、幼稚園に向かう道で私は娘に聞きました。
『ね?遅刻しないのと、おばあさんが風邪ひかないのとどっちがいいと思う?』
娘は少しだけ考えて言いました。
『う〜ん。やっぱり、かぜひかないほうがいいね』
私たちは幼稚園に向かって走り出しました。
私はなんだかちょっとだけ娘がかわいそうな気持ちになりました。なにせ遅刻ゼロが彼女にとってものすごく大切で大きな目標だったので。
私勝手だったかな、そんな気分なりかけた時、娘が付け加えて言いました。
『遅刻はゼロよりも、よい遅刻1回の方がいい気がする』
私は胸が一杯になって、うんうん、と頷きながら、小さい手を握ったまま幼稚園に走りました。