家の地味な植木だったくちなしが咲き始めた。
あまりにうっとりとする香りに部屋が明るくなった。
幸せな気持ちになった。
毎回リビングでは、思い切り深呼吸したいぐらいの気分になった
そして、花はどんどんと咲きはじめた。
昨日、花のある横のソファで仕事をしていたときに
ふいに、そのあまりに強い匂いに突然吐きそうになった。
わたしは、たちあがり、植木を反対側の隅にひきずって移動させた。
その時にふいに、心がズキンとした。
(距離なんだ)
どんなにうっとりとする香りでも強すぎると耐えられなくなる。
花が悪いわけでもない。花は美しく咲いているだけだ。
香りを出すこともわるいことではない。
でも、あまりに強いと距離が必要になってくる。
これは、人間関係や仕事に、とても似ていると思った。
好きになると一生懸命になってしまう。ベストを出すこと、尽くすこと。
もっとしてあげよう、もっとできる、って、がんばってしまう。
何かが上手くいかなかった場合、自分自身や相手が何か悪いのではなく
もしかしたら、その距離の置き方が、間違ってしまっているのかもしれない。
適度なところに佇んで存在する。穏やかに。
そういうのは、案外むつかしいことだね、と思った。